コラム
相続人がいない場合どうする?国庫帰属から守る遺贈と特別縁故者制度
遺品整理
2025年12月21日
大切な人が亡くなり、相続人がいないことが判明した場合、残された財産が一体どのような運命をたどるのか、その行方に関心が集まるのは自然なことです。
遺産は最終的に国庫に帰属するものとして知られていますが、その過程においては、遺言による特定の個人や団体への指定、あるいは長年支えてくれた特別な関係にあった人物への財産分与といった、様々な可能性が法によって定められています。
これらの複雑な法的手続きは、専門家による適切な管理と、定められた期間内での丁寧な進行が求められます。
今回は、相続人が不在の場合の遺産がどのように扱われ、誰に、どのような条件で分配されうるのか、その具体的な流れと手続きについて詳しく解説していきます。
目次
相続人がいない場合の遺品の帰属先
遺産は最終的に国庫に帰属する
民法上の相続人が一人も存在しない、あるいは相続人が全員相続放棄をした場合、被相続人が所有していた財産は、特別縁故者への財産分与がなされた後、なお残余財産が存在する限り、最終的には国庫に帰属することになります。
この国庫への帰属は、家庭裁判所への相続財産管理人の選任申立てから始まり、相続人捜索のための公告期間(原則として6ヶ月以上)を経てもなお相続人が現れない場合に、その次の段階として行われる法的な結末です。
公告期間中に相続人が現れたり、遺言による遺贈が有効であったりする場合には、国庫への帰属とは異なる結果となりますが、それらの可能性が全てなくなった場合に、残された財産は国のものとして扱われます。
相続財産清算人が遺産の管理・換価を行う
相続人がいない、またはその所在が不明な場合、家庭裁判所は利害関係人(例えば、被相続人の債権者や特別縁故者など)の申立てに基づき、「相続財産清算人」を選任します。
この相続財産清算人の主な役割は、相続財産を管理し、債権者や受遺者(遺言による受取人)に対して弁済を行い、最終的に残った財産を国庫に帰属させるための手続きを円滑に進めることにあります。
清算人は、相続財産の調査、目録の作成、財産の保全、債権者・受遺者に対する公告や通知、そして必要に応じて遺産を換価(売却などにより現金化)し、その代金を分配する権限と義務を負います。
これら一連の職務は、相続財産を公平かつ適正に処理するために不可欠なプロセスです。

相続人不在の遺産特定の人や団体に渡せる?
遺言で指定した人に遺贈できる
被相続人が有効な遺言書を作成していた場合、その遺言に記された内容は、法的な有効性が認められる限り、相続人の有無にかかわらず最優先されます。
つまり、相続人が一人もいない場合でも、遺言によって特定の個人(友人、長年の知人など)や団体(お世話になったNPO法人、慈善団体、大学の研究室など)に、遺産の一部または全部を「遺贈」することが可能です。
遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言などいくつかの種類があり、それぞれに作成方法や効力発生要件が異なりますが、これらの形式を満たしていれば、故人の意思として遺産を託すことができます。
遺言がない場合にのみ、後述する特別縁故者や国庫への帰属が検討されることになります。
特別縁故者として財産分与を受けるための条件
相続人が存在しない場合でも、被相続人と特別な縁故があった人物が、その財産の一部を受け取れる制度として「特別縁故者」への財産分与があります。
民法第951条および第952条では、特別縁故者について「被相続人と生計を一つにしていた者」、「被相続人の療養看護に努めた者」、「その他特別の縁故があった者」と規定されています。
単に親しかったというだけでは認められにくく、例えば、長期間同居して家計を支えていた内縁の配偶者や、献身的に介護を行っていた友人などが該当する可能性があり、裁判所がこれらの関係性の「相当性」を総合的に判断します。
この財産分与を受けるためには、相続人捜索の公告期間が満了した日から3ヶ月以内に、相続財産管理人に対して請求を行うことが必要となります。
特別縁故者への分与手続きと期間
特別縁故者への財産分与手続きが開始されるのは、相続財産管理人が選任され、家庭裁判所が相続人捜索のための公告(原則6ヶ月)を行った後、その期間が満了してからとなります。
特別縁故者と認められる可能性のある者は、この公告期間満了後3ヶ月以内に、相続財産管理人に対して財産分与の請求をしなければなりません。
請求を受けた相続財産管理人は、家庭裁判所の審判を経て、特別縁故者に対して財産の全部または一部を分与するかどうか、また、分与する場合にはその額や方法を決定します。
この一連の手続きには、相続財産管理人の選任、財産の調査・換価、債権者への弁済、そして特別縁故者への分与といった段階が含まれるため、事案によっては1年以上、あるいはそれ以上の期間を要することもあります。
まとめ
相続人が一人もいない遺産は、原則として最終的には国庫に帰属するという法的な定めがあります。
しかし、この最終的な帰属に至るまでには、いくつかの重要な段階と可能性が存在します。
まず、被相続人が有効な遺言を残していれば、その遺言に基づき指定された個人や団体に遺贈されることが優先されます。
遺言がない場合には、裁判所によって選任された相続財産清算人が、相続人の捜索公告、債権者への弁済、そして、被相続人と特別な関係にあった特別縁故者への財産分与といった複雑な手続きを進めます。
これらの手続きは、公告期間や審判、換価などを経るため、相当な時間を要することが一般的です。
故人の意思を最大限に尊重し、残された財産が適切に処理されるためには、専門家への相談も視野に入れ、慎重に進めていくことが不可欠といえるでしょう。








